かの有名な『くだんの母』『さとるの化け物』『影が重なる時』も収録された小松左京自選短編ホラー集。
SFホラーから歴史を扱ったホラー、コメディ的ホラーまで一気読み。
一作毎の短さに反比例した圧倒的な情報量・知識量に驚かされる。今の世の中で古事記や日本書紀をテーマに現代ホラーを描ける作家は何人居るのだろう。何より全てにオチがついているのが良い。
(オチが無いと噂の『くだんの母』だが、主人公の母方親戚は豪家であったと示唆される描写がある。元々主人公の家系もくだんを生み出す要素はあったと私は読み取った)
若い読者には「オチが予想出来る」と思われるだろう。当然だ。これらの小松作品は多くの作家に散々パクられクラシックになったのだから。
本格物と向き合う事が、行間を読む事が、作者の開陳する知識をフラットな視点で読み込む事が出来る読者は今の世の中で何人居るのだろう。最近の私達はサブカルに逃げている。読み手も書き手も。昨今流行りの雰囲気だけのホラーもどきに私は飽き飽きしている。
何年も読み継がれる名作、クラシックを生み出したい作家志望にお薦めの一冊だ。
(この曲が怖くなる作品だった『召集令状』)
今週のお題「読んでよかった・書いてよかった2024」