パリと東京を股に掛け書かれた、エッセイという名の私小説。
おそろしい本だった。
この本には希死念慮そのものが描かれている。心の弱っている人が読めば、希死念慮に連れて行かれるだろう。
テロが身近な為、むしろ自らと死の間に距離を置けるパリ。パリに比べれば平和な為、ぼんやりとした死が自らに迫り来る東京。
この本を読んでいる間、どちらにも住んでいない私はどちらの風景にも紛れていた。死が目の前に在った。
おそろしい本だった。
子供や友人の何気無い描写、また、好きな音楽のくだりに救いがあって良かったと心から思う。
心身共に余裕のある時だけ読む事をおすすめする。
著者が好きな音楽を好きなだけ聞いて、心身をゆっくり休める事が出来たらと願わずにはいられなかった。
私は初めて金原ひとみ作品を読んだ。彼女は文章が巧い。